恵那と宗一郎はマザーを討伐
巨大植物のマザーを破壊できたことにより、町中を漂っていた胞子は消え、奇妙な植物もなくなりました。
そして町民を苦しめていた奇病もおさまり、奇妙な歩き方をしていた奇病患者も町から姿を消しました。
こうしてStrangerVilleに再び平穏が戻ったのです。
しかしStrangerVilleの町民は、自分たちの町を救ったのが誰なのか知りえませんでした。
夫婦を偽装して町に潜入した科学者と秘密諜報員。
彼らの正体を知らないからです。
誰にも知られることのない二人の英雄は、静かに祝杯を挙げるのでした。
宗一郎「恵那、お疲れ様。」
恵那「お疲れ様です。宗一郎さん。」
宗一郎「明日もう退去か…あっという間だったな。」
恵那「本当に。ここに越してきたのが、昨日のことのようです。」
宗一郎「ディランには言ったのか?明日引っ越すことを。」
恵那「…言うわけないじゃないですか。」
恵那「…正直、11年分のディラン君への思いをすぐに断ち切ることなんて出来ないです。」
恵那「でも、ようやくわかったから。その11年間の思いも、高校生の彼への恋心だったってこと。」
恵那「…思い出に恋していたってこと。」
恵那「ディラン君にとっても、私は思い出の中の人なんです。」
恵那「高校生の頃の彼女、初恋の人。自分を無条件に好きでいてくれた人。」
恵那「11年たって再会した今、彼にとって私は他人同然のはずだった。私にとってのディラン君も同じ。11年という、人生の中でとても長い期間を知らない他人同然の人間なのに、自分の思い出の中で恋した相手として見てしまっていた。」
恵那「それが分かったら、なんだかようやく自分の現実を前に進めることが出来るような気がしてきました。」
宗一郎「そうか。」
恵那「…私の人生、ずっとディラン君のことを追いかけていたんですよね。」
恵那「高校生の頃からそう。大学の志望校も就職先も、全てディラン君に会いたいがために決めてきたんです。」
恵那「当時はそれが正解だと思っていたけど、今思うと本当に恥ずかしい。」
恵那「…だから。」
恵那「…明日この任務が終わったら、科学者の仕事を辞めようと思っています。」
宗一郎「・・・・・・・・・」
恵那「で、ここからはちゃんと自分の人生を考えようと…」
宗一郎「辞める必要なんてないだろ。」
恵那「…え?」
宗一郎「俺は科学者を辞める必要はないと思う。」
宗一郎「きっかけなんてどうでもよくないか?ディランを追いかけるというどうしようもない動機だったとしても、お前は8年も同じ仕事を続けていたわけだろ。」
宗一郎「そこで培ったもの、簡単に捨てるなよ。」
恵那「・・・・・・・・・」
宗一郎「あんたは向いてるよ。科学者。」
宗一郎「…俺もあんたとなら、また仕事してもいいと思ってる。」
恵那「…宗一郎さん。」
恵那「本心ですか?」
宗一郎「そんなこと嘘ついてどうする。」
恵那「ですよね。宗一郎さんは、私には正直ですもんね。」
宗一郎「?そりゃそうだろ。同じ任務に携わっている奴に嘘なんかつけない。」
恵那「・・・・・・・・・」
恵那「ありがとうございます、宗一郎さん。」
翌日
宗一郎「向こうに迎えが来ている。準備はいいか?」
恵那「はい。」
宗一郎「…本当にディランに何か言わなくてもいいのか?」
恵那「はい、大丈夫です。」
さようなら、ディラン君
たくさんの楽しい思い出をありがとう
こんなにも人を好きになることが出来るんだってこと、教えてくれてありがとう
私にとって、あなたは特別な人だった
でも今日でさよならするね
11年の思いは、この町に・・・
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