【私はストレンジャー#11】また会えるから

2021/06/10

私はストレンジャー

t f B! P L

※デフォシムの過去を捏造しています。苦手な方は閲覧ご注意ください。※







恵那「…話って何?」

ディラン「・・・・・・・・・」



恵那「最近、全然連絡くれなかったよね。それとなにか…関係ある?」

ディラン「・・・・・・・・・」


ディラン「…恵那に話さないといけないことがあるんだ。」
恵那「……うん。」


ディラン「実家に帰ってこいって言われた。」




恵那「え…?実家?」





ディラン「高1の頃、親が転勤したんだけど俺だけ元の家に残ったんだ。転校するのも嫌だったし一人暮らしをしてみたかったから。でも、そろそろ本格的に受験勉強しないといけないだろ。受験のサポートをしたいから、実家に戻って来いって言われた。」


恵那「・・・・・・・・・」


ディラン「今住んでる家も昔の家だし生活費は仕送りだし、そんな風に言われたら、「はい」って言うしかないよな…。」



恵那「・・・・・・・・・」

ディラン「…だから、転校することになった。」



恵那「……え?」

ディラン「今親が住んでるのはBrindletonBay。そっちの高校に入ることになった。」

恵那「……そんな……」



ディラン「…ずっと黙っててごめん。恵那に伝えるのが辛くて…どうしてもすぐに話せなかった。」



ディラン「…ごめん。」






ディラン「・・・・・・・・・」
恵那「・・・・・・・・・」





恵那「…ディラン君」
ディラン「…うん。」



恵那「BrindletonBay、遠いよね。」
ディラン「……うん。」



恵那「でも、会いに行けない距離じゃないよね。」
ディラン「…恵那…」



恵那「それにWi-fi飛んでるし。」
ディラン「……うん?」



恵那「Wi-fiじゃなくても何かしらの電波は飛んでるはず。」
ディラン「まぁ…そう、だよな…?」



恵那「ディランくん!」





恵那「私、会いに行くよ。ディラン君がBrindletonBayに行っても、私ディラン君に会いに行く。」



恵那「今みたいに毎日会うことは出来なくなるけど…でも、お金貯めて出来る限りたくさん会いに行けるように頑張る。」



恵那「それに毎日メッセージ送る。」

恵那「テレビ電話もしよ!出来ない日は普通の電話でもいいし。」




恵那「ね?今のこの時代、なんだって手段はあるよ。」




恵那「それで、受験勉強も頑張る。今みたいにディラン君と勉強会出来なくなるのは悲しいけど…私ももう一人でも大丈夫。」


恵那「受験勉強頑張って、一緒にフォックスベリーに入ろう。そこでまた今みたいに過ごせるようになるよ。」



ディラン「…恵那…」


ディラン「…ありがとう。」

ディラン「恵那…大好きだよ。」



恵那「私も。大好き。」





ディラン「そうだよな…俺らだったら大丈夫。離れていても恵那のことを好きな気持ちは変わらない。」




恵那「私だって…変わらないよ。ずっとディラン君のことが好きだよ…。」















それから、数週間後
ディラン君はBrindletonBayの実家に戻り、転校してしまった。


会いに行けない距離じゃない。
でも高校生の私たちには遠く感じた。



ディラン君と離れてから、一日一日が本当にゆっくり過ぎていって。
今まで一緒に過ごしていた時間を、どうやって埋めていいのか分からなかった。
ディラン君と付き合う前まで、私どんな生活をしていたんだろう。


学校でも、放課後でも。
毎日一緒に勉強会をしていたから、一人でその時間勉強するのはとても寂しく感じた。


寂しく感じた?
そんなもんじゃない。



会いたくて会いたくて。


苦しかった。


会いたくても、会いに行けない。
ディラン君はもう、すぐに会える距離にはいない。



毎日メッセージを送ったし、毎日電話もした。

でもそれだけじゃ足りなくて。




数か月に一度、BrindletonBayへディラン君に会いに行った。








ディラン君、全然変わってなかったな。





毎日メッセージも電話もしていたはずなのに話は尽きない。

最近何をしているとか、勉強のこととか、友達のこととか。




たくさんたくさんお話した。



どれだけ話しても、お別れの時はいつも泣いてしまいそうになる。


帰りたくない。
このままここに残っていたい。ここでずっと暮らしたい。



別れ際、ディラン君はいつも抱きしめてくれて。
「また会えるから。」って送り出してくれた。




私はその言葉を胸にまた、ディラン君のいない日常へと戻っていく。





「また会える。」
その言葉だけが、私の支えだった。





毎日のメール
毎日の電話
そして数か月に1回ディラン君に会いに行く


これがずっと繰り返されていくものだと思ってた。





でも、だんだん変わっていった。




受験が近づくにつれBrindletonBayに直接会いに行くことが出来なくなっていって


メッセージの返信も遅くなっていって。
毎日していた電話も、1週間に1度になっていって。




それにディラン君からの連絡よりも
私からの連絡の方が増えていった。

最初はお互いにメッセージを送りあったり電話しあったりしていたのに。
ディラン君から連絡が来ることがほとんどなくなっていった。




恵那「・・・・・・・・・」







そしてもう、彼から返信は来ない。


返信もない相手にメッセージを送り続けられるほど、私は心が強くないし無神経じゃない。




なんとなく気づいていた。

受験だと言っても会う頻度が減っていって、返信がなくなったり、電話に出なかったり。



分かってた。


これが自然消滅、ってやつなのかな。




それから私は、受験に失敗。
フォックスベリーに入ることは出来なかった。


ディラン君は合格したんだろうか。
…うん、彼の成績ならきっと大丈夫なはず。

私も合格してフォックスベリーに入って彼に再会したかった。
そしたらまた、前みたいに変わらず恋人として始められるはずだって。
約束した、寮で一緒に暮らせるって。



でもそれももう叶わない。



バカみたいだけど、ディラン君のことがずっと忘れられない。

もう終わっているってことは分かっている。
だけど、気持ちを塗り替えることがどうしても出来ない。



街を歩いていたら、もしかしたら偶然彼に会えるんじゃないかって。
もしかしたらディラン君から連絡が来るかもしれないって。


そんなこと、ありえないのに。
何かするたびに、どこかに出かける度に、ディラン君がいないか探してしまう。

彼から連絡が来るかもしれないから、私の電話番号も何もかも変えられないまま。



恵那「・・・・・・・・・」












私だけ、ずっと取り残されている。











高校を卒業してから数年、20歳になった私は未来シム研究所に入所することとなった。

下っ端研究員であれば、大学で課程を修了していなくても就職することが出来る。



昔ディラン君が科学者になりたいと言っていたのを覚えていた私は、もしかしたら彼がこの研究所にいるんじゃないかと思って入所した。


でも、ここにも彼の姿はない。
当たり前か。

科学者といっても、研究所はたくさんある。
それに今も科学者になりたいって考えているかは分からない。


でももしかしたらいつか、彼が未来シム研究所に入所するかもしれない。

そんな淡い期待を抱いて、私は今でもこの研究所に勤めている。




入所してからかれこれ8年。

やましい動機で入ったわりに長く勤めたものだ。
下っ端研究員だった私も、今ではそれなりに仕事を任されて評価も得ている。



他のシムと付き合うこともあった。

でも、心のどこかにはいつもディラン君がいて。
その恋人のことを本気で好きになることは出来なかった。

本当に最低だと思う。


でも、私はこんなシムになってしまったんだ。
いつまでも初恋を引きずる女に。





所員「城崎さん」





所員「上に秘密諜報組織S.I.M.Sの方が見えてます。」
恵那「S.I.M.S?」
所員「新しい仕事のことかと。」
恵那「分かりました。」




またいつもの変わらない日常。
ただ彼だけがいない。
私が一番求めているものだけがない、毎日。



そんな風にこれからも続いていくと思っていた。



この日までは




次回に続きます


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